1.きりきりねじ切り

「うーん、むずかしいねぇ」
「何がだ」
「あ、シー」
「シ・ィ・ハ・オ・だ」
「シーハオ。これ堅いんだよね」
 言ってフタ付きのビンを彼に渡せば。
「なんだこんなもの」
 バキ、と音を立ててビンのフタから上が(フタごと)分離した。
「……普通ねじ切るってもうちょっと違う音がするもんだと思ってたけど」

 きりきりとかきりきりとかきりきりとか。

「何か言ったか」
「ううん、ありがとシー」
「シーハオだ!」

・・・・・・
一応ね、中華風らしいですよ(よって)

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

2.骨の隋まで

 市がやっているからと出てきてみれば予想通り人の山。
 あまりのやかましさにどこか行ってしまったシーハオを放って、リゥハオはひとりお買い物を満喫中。
「きゃー!」
 との悲鳴に振り向けば人込みを掻き分け逃げてくるひったくり。
「怪我したくなかったらそこをどけぇ!」
「……怪我するのはどっちだか」
 その程度の腕で、と若干呆れつつ足を蹴り上げれば男は倒れる。
 拍手喝采いやはや照れるねはっはっは。
「一体何をやってるんだお前は」
 はては曲芸まで披露し始めたリゥくんの、背後に立つのは長身の鬼。
「いやーはじめたら楽しくなっちゃって、つい」

 シーもやる?

「誰がやるか……!」
 火に油を注いだお調子者に、雷が落ちたのはこのすぐ後。

・・・・・・
1ででてきたもうひとり、のリゥハオくん。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

3.陳腐な言葉

「かわいかったねーさっきの子」
 ちょっと買っただけなのにあんな笑顔でありがとうだってさ。
 くるくると一輪の花を振りながら、そうリゥハオは笑った。
「だからどうした」
「えー何シーくんったら不機嫌モード?」
「――――」
 からかうように言えば、射殺さんばかりの視線が返ってくる。
 相変わらずのつれなさに肩をすくめ、花を空へと掲げてみせた。
 先ほどの少女の笑顔。
 ありがとうと、贈られた言葉。
「シーは、さ。嫌いなのかもしれないけど」
「…………」
「僕は結構好きなんだよ? あぁいう陳腐な言葉もね」

 ちらりと横を窺えば、予想通り歪められた隣人の顔。
 からかおうと口を開けばその会話は、「シーじゃない。シーハオだ」と、今更のように付け加えられた言葉で打ち切られた。

・・・・・・
やたら名前にこだわる子になってしまったシーハオくん。です。

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

4.僕のカミサマ

 ピン、と弦を引けば低い音が。
 トン、とその腹を叩けば響く音が。
 瓢箪に似たその楽器に、軽く触れては離れてを繰り返す。

 なんだかなぁ、と零れるのは苦笑い。
 どうにもこうにも柄じゃない。
 ただの楽器のはずなのにどうしてこうも臆病なのか。

 武器と同じようには扱えない。
 あれほどには強くないから壊れてしまう。
 けれども同じように扱いたい。
 あれよりもこの両の掌に馴染ませたいのに。

(上辺だけでも誤魔化すために?)

 リゥハオと、呼ばれて頭を切り替える。
 それでも刃を扱うよりも繊細に、その楽器を布に包んでしまいこんだ。

・・・・・・
リゥじゃなくてシーさんがメインのはずなんですけどね。
いつの間にかリゥさんばっかり。…あれ?

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

5.このままずっと

「ねぇシー」
「シ・ィ・ハ・オ・だ」
「ねぇシー」
「シィハオだと言っているだろう」
「ねぇシー」
「リゥハオ貴様いい加減にしろ!」
 小声ながら凍えながら、殺気を込めて言い返すとひたと視線を合わせてリゥは唸った。
「飽きた」
「うるさい」
「飽きた飽きた飽きた!」
「うるさいと言っている!」
 どんだけここで待ってりゃいいのさ!?
 わめくリゥハオ怒鳴るシーハオ。
 ふたりに帰還の命が下ったのは、それからさらに半日が過ぎた頃。




 時は真冬。
 環境適応訓練の一環だったとさ。

・・・・・・
ひとまずお題が終わったので、今度は本編をかけたらなぁ。
とは思うものの、もう少しキャラクターを練っていたいような。うーん。